なぜ、セクハラは起こるのか?を考えてみました
こんにちは、ハラスメント研修専門講師の山藤祐子です。
ハラスメント防止研修で、参加者の方に考えてもらうことがあります。
それは、なぜセクハラが起きると思いますか?
そして、セクハラは、なくなると思いますか?
この質問をする理由は、原因を考えることで、発生を防げる可能性があると、考えているからです。
また、職場で一つでもセクハラをなくしていくためには、セクハラの行為者の立場になって、考えてみることも必要だと思っているからです。
セクシュアルハラスメントが流行語になったのは、約30年前の1989年。
男女雇用機会均等法に、性的嫌がらせをしてはいけないことが盛り込まれたのは、1997年。
そこから約20年経ちましたが一向に減ることはなく、男性から男性、女性から女性へとセクハラが多様化してきています。
(出典元:厚生労働省ホームページhttp://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-14.html 2018年5月17日最終アクセス)掲載許可は確認済
2007年に相談件数が増加している背景は、平成19年4月に施行された改正雇用機会均等法で、女性だけでなく男性に対する差別も禁止となったこと。
そして、それまでセクシュアル・ハラスメントの防止は事業主の配慮義務であったものが措置義務となり、具体的な措置が求められるようになったためと考えます。
なぜ、セクハラが起こるのか?
なぜ、セクハラはなくならないのか?について、書こうと思います。
セクハラが起こるのか?
なぜ、セクハラが起こるのか、私は以下の4つが挙げられると考えます。
(1)人によって、性に対する考えの違いが理解できないため
(2)古典的な男尊女卑の考え方が変えられないため
(3)権力や立場による圧力の認識不足のため
(4)部下や同僚の仕事の対等な仲間として見ていないため
一つひとつ、説明します。
(1)人によって、性に対する考えの違いが理解できないため
年代、性別、嗜好によって、性に対する考えは違うものです。
同じ20代男性だったとしても、「ナンパ大好き!」という方もいれば、「女性と付き合うのは面倒くさい」という方もいます。
同様に、40代女性でも、「猥談(わいだん)が楽しい!」という方もいれば、「そういう話をするのは嫌い」という方もいます。
そんなふうに、性に対しての考えは同じということはありません。
例えば、同じ会社の中で総務部で働く、50代の男性の部長と20代の女性が「性」に対して、全く同じ考え方ではないはずです。
ところが、同じ職場で働き続けると、少しずつ「色んな考えがある」という認識がうすれていくことがあります。
そうすると、「これまで飲み会で女性は男性の間に座ってもらって、お酌をしてもらっていたから、今回入ってきた新人さんに同じようにしても構わない」という理論が成り立ってしまう場合があるのです。
また、「男性は性欲があるから、ガールズバーが好きだ」と考え、「よし、今日の二次会はいつもあのお店にしよう」と参加するかどうかも聞かずに、転職してきたばかり方に対して「当たり前のように」に誘ってしまうことが起こります。
これは、相手に対しての共感力の欠如ともいえます。
色んな考えがある前提の下で考えるのではなく、「自分の考えは、相手も同じである」と思い込み、自分の価値観を押し付けるという行為になると考えます。
だから、「セクハラするつもりじゃなかったのに・・・」と言いながら、セクハラしてしまうのだと考えます。
(2)古典的な男尊女卑の考え方が変えられないため
「殿方から、そんなこと(みだらな行為)をされても笑ってすまさなければ」と、セクハラ騒動がある度に、私よりも年上(60歳以上)の方々が発言された記事を読みます。
いったい、いつの話ですか?と思わず、突っ込んでしまいたくなる考えですが、まだまだ男尊女卑の考え方は無くなっていないと残念な気持ちになります。
実際に管理職の方々に研修を実施して、「女性には、難しい仕事はお願いできない」と、ハッキリと言われたこともあります。
また、下に見ているわけではないのだと思いますが、女性スタッフのことを「うちの女の子」と呼んでしまう方もいます。
反対に、男性には「男だから、この仕事最後までやらせてやりたい」といった言葉を使って、鼓舞させようとする方もいます。
決して、悪気はないものの、いつまでも抜けない、「男性だから」「女性だから」という性役割の押し付けで、相手を傷つけてしまい、セクハラと言われてしまうのです。
(3)権力や立場による圧力の認識不足のため
研修で、「上司や先輩から誘われたら、『ノー』とは言いにくいものです」という話をすると、必ず、「イヤなら断ればいい」という意見を貰います。
「イヤなら断ればいい」
本当にその通りなのですが、若手や気の弱い方々には、「イヤなら断る」ことはとてもハードルが高いのです。
若手の研修をしていると、「飲み会の誘い、断ってもいいですか?何回くらい続けて断ったら、嫌われますか?」と真面目に聞いてくる方は少なくありません。
・断って、嫌われたらどうしよう
・嫌われたら、もう教えてもらえなくなるのでは?
こういう心理が働き、イヤだなと思っても、断ることができないのです。
しかし、誘う側はそういうことはお構いなしに、相手が「イエス」というと、その言葉のままに受け取ってしまう傾向にあります。
中には、「誘って断らないから、俺のことを好きかも?」という錯覚を抱くケースもあるようです。
組織の立場があるから、権力があるから、それで断らない(断り切れない)だけなのに、恋愛感情があるものだと思い込んでしまう。
こうして、不幸なセクハラが起こってしまうのです。
(4)部下や同僚の仕事の対等な仲間として見ていないため
(1)~(3)を通じて、言えることでなのですが、部下や同僚は、職場の仲間と見ていないために起こっていると考えます。
例え、役職の上下があったとしても、それは組織の中で決められた、「役割」です。
部下も同僚も、職場の仲間ではないでしょうか。
一緒に働く仲間に対して、自分の価値観を押し付けたり、欲望を押し付けたり、してはいけないのです。
セクハラをしないために、どうすればいいか
セクハラをしないために、どうすればいいかというと、まずはご自身の言動を振り返ってみることから始まります。
自分の言動は、誰かを傷つけていないか、誰かに無理強いしていないか、を考えてみて欲しいのです。
そして、もし見つけたらはっきりと、「ダメですよ、それセクハラです!」と教えてあげて欲しいのです。
と言いつつも研修で、
「とはいえ、男と女がいるかぎり、無くならないんじゃないですか?!」と聞かれます。
確かに、職場で起こるセクハラは、根絶するのは難しいかも知れません。
しかし、確実に10年前、20年前よりも、声を挙げることが容易となり、その声をしっかりと受けとめる組織も増えています。
これを書いている2018年5月現在、世の中も、セクハラに関して非常に敏感になりました。
きっと、これからもっと変わると思っています。
だって、職場でセクハラは、全く不要なものなのですから。
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