新入社員が「これって、パワハラ?」と思ったときに。知っておきたい見分け方と受けとめ方
こんにちは、ハラスメント研修専門講師の山藤(ざんとう)祐子です。
今回は、「パワハラなのか」「パワハラではないのか」とモヤモヤしている新入社員の方に向けて、「パワハラ」と「指導」の違いについてお届けします。

こんにちは。ハラスメント研修講師の山藤祐子です。
春から新社会人として歩み始めたみなさんに向けて、今日はとても大切なお話をしたいと思います。
それは「パワハラ」と「指導」の違いについて。

職場ではときどき、厳しい言葉や注意を受けることもあります。
そんなとき、「これってパワハラじゃないの?」と感じることがあるかもしれません。
でも実は、そう思う前に知っておいてほしいことがあります。
パワハラかどうかを判断する3つのポイント
パワハラとは、パワーハラスメントの略語のこと。
職場における、仕事に関係のない「嫌がらせ」を指します。
そして、「あなたがパワハラだと感じたらパワハラ」というわけではありません。
パワハラかどうかを判断するポイントは次の3つです。

- 業務とは無関係な指示・命令ではないか
- 例)休みの日に、ゴルフの送り迎えを強要する
- 例)飲み会で、無理やり飲まされる
- NO!と言えない、圧倒的な力関係があるか
- 例)「返事はハイだ!」とそれ以上の言葉を言わせてもらえない
- 例)言い返せない雰囲気があり、絶対服従を強いられる
- 人格を否定するようなことを言われたか
- 例)「バカか!!」「能無し!」などの人格そのものを罵倒する言葉
- 例)「その程度の大学だから、しょうがないな」といった出身校を引き合いに出した言葉
これら3つのポイントをすべて満たし、また繰り返し起こっている場合、パワハラと認定される可能性は高いです。
「可能性が高い」と書いたのは、事実関係を明らかにしながら調査しないと分からないことがあるからです。
パワハラと指導の違い
<パワハラ>
業務に関係なく、自分の感情を押し付ける自己中心的な言動、嫌がらせ
<指導>
業務上、あなたの成長を促すための言動
ひとつ、事例をあげて解説しましょう。
あなたが、何度も指示を受けているにも関わらず、ミスをしてしまった。
そのとき上司から「何度教えたら、分かるんだ!」と強めに言われたとしても、パワハラではありません。
しかし、「何度教えたら、分かるんだ!この能無しが!だから、お前はダメなんだ!」と、長時間人前で怒鳴りつけられたとすれば、パワハラに該当する可能性が高いです。

強制された・叱られた=即パワハラとはならないことを知る
では、次のようなケースは、どうでしょうか。

やりたくない仕事をやるように言われました

ミスをしたら叱られました
結論から申し上げると、これだけでパワハラには当たりません。
次のような場面は、業務上必要な指導です。
- 雑務の指示(例:資料のコピー)
- 遅刻などに対する注意
- 根拠に基づいた業務評価(例:仕事が遅い、ミスが多いなど)
- 仕事が終わらなかったので、残業を命じられた
- リモートワークのつもりだったのに、出社を命じられた
また、「強制=パワハラ」と思われがちですが、業務においては、会社の指示に従うことが前提です。
仕事とは、会社からお給料をもらって、決められた役割を果たすこと。
つまり、得意でも苦手でも、まずは任された仕事に取り組むことが社会人としてのスタートと言えます。
もちろん、「明らかに業務と関係ないこと」を強制される場合は別の話です。
注意・指摘されるのは、成長のチャンス
重ねてお伝えしますが、業務上の注意や指摘は、パワハラではありません。

もしあなたが仕事の中で、上司から注意を受けたり、やり方を直すように言われたら。
それは、あなたの成長につながる、プラスの経験になることもあります。
具体的には、次のようなことです。
- 自分の改善点や強みに気づける
言われなければ、気づかないことがたくさんあります。他人は言ってくれません。上司だから、あえて指摘してくれるのです。 - 成長の機会になる
「ここを直せばもっと良くなるよ」という言葉は、スキルアップするタイミング。あなたの可能性を広げてくれます。 - 問題の早期発見につながる
小さなミスを放置すると、大きなトラブルに発展することがあります。そうなったときのほうが、とてもツラいのではないでしょうか。
注意されたり、指摘されたりすると、最初は落ち込むこともあるかもしれません。
ですが、まずは理解してほしいのです。
上司の評価は、仕事ができたかどうかを見るもので、あなたの人柄を否定するものではないということを。
上司はあくまでも、あなたの仕事の「やり方」や「進め方」を注意しているにすぎません。
逆に、何も注意されない、指摘されないということは、成長の機会を失うことになります。
あなたが「できる社会人」へと成長するために、上司からの指導は必要なステップです。

指示を受ける側のあなたに、できること
上司は、あなたに仕事の指示をしたり、指導したりするのが仕事です。
あなたは、その指示や指導に従って、仕事を進める必要があります。
ここでは、誤解や思い込みでミスを引き起こさないためにも、あなたにできる基本的なことを5つ、お伝えします。
- 指示内容はメモをとる
- 指示の内容がわからないときは、必ず質問する
- 指示の内容を復唱して、正しく理解できているかを確認する
- いつまでに、何をどのようにすればいいのか、数字で確認する
- 仕事を進めるうえで、弊害になりそうなことがあれば、上司に相談する
仮に、あなたが何も質問しなければ、上司は「伝わった」と思って、あなたの仕事が終わるのを待つでしょう。
ですが、わからなければ、上司に質問していいのです。
それが、あなたの仕事でもあります。
職場である以上、仕事にしっかり向き合う必要があることは、知っておいてくださいね。

そうは言っても「やはり、パワハラでは?」と感じたら
ここまで書いてきたように、冷静に見ても、指導とは思えない、やはりパワハラでは?と感じたとしても
いきなり上司に向かって「それ、パワハラですよね!」と、伝えるのは、あなたにとって良い方法とは言えません。
本当にパワハラだとしたら、なおさらですが、しっかり手順を踏むことがあなたを守ることにつながります。
<対処のステップ>
- 記録をとる
日付・時間・場所・言われた内容・同席者など、できるだけ詳細に記録を取ります - 社内の誰かに相談する
記録をもとに、人事、採用担当、または社内の相談窓口などに相談しましょう - 外部の窓口に相談する
会社で相談できない場合は、外部の相談機関もあります
「苦しい」「納得できない」と思ったときは、一人で抱え込まなくていいのです。
必ず、誰かに相談してください。
おわりに
就職したばかりの人にとって、パワハラと指導の線引きは、わかりにくくて当然です。
上司だって「これは、パワハラかもしれない」と迷うことがありますから、あなたがわからなくても仕方がありません。
しかし、パワハラについて正しい知識を持っておくことで、余計な不安やすれ違いを減らすことができます。
まずは「パワハラだ」と決めつけず、冷静に考える時間をもってください。
そして、誰もが気持ちよく働ける職場となるように、新入社員のあなたにも、できることがあると知ってほしいと思います。
入社したばかりのころは、いろんなことが、はじめて続きの毎日ですよね。
小さな「わかった」が、明日の「だいじょうぶ」につながることを願っています。
<参考>
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