【部下との会話】「髪、切った?」はセクハラなのか?
こんにちは、ハラスメント対策専門家 山藤祐子です。
先日、ハラスメント対策の研修で、管理職の方から部下との会話について相談されました。
「最近は、何でもセクハラと言われてしまうので、話しかけられない」
「髪を切ってきた女性部下に対して、“髪、切った?”と言いたいけど、言えないでいる」
「何がセーフで、何がだめなのか、わからない」
ということで、今回は職場のどんな会話がセクハラに当たるのか、そしてどういう話ならセクハラに当たらないのかを書きたいと思います。
セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)の定義とは
改めて、ここでセクハラの定義をご説明します。
セクハラとは、セクシュアル・ハラスメント(sexual harassment)の略で、性的な嫌がらせをすることです。
性的な意味を持って体を触るなどの身体的な接触もあれば、言葉によるものも含まれます。
言葉によるセクハラとは、みだらな誘いをしたり、性的な言葉を発することです。
また、みだらな誘いを断ることで、断った人が仕事に支障が出ることや、脅されるなども含まれます。
ということは、性的な内容が含まれていない発言については、セクハラではないということです。
「髪切った?」は、セクハラか?
「セクハラは、相手がそう感じたらセクハラだ」と思い込んでいる方がいらっしゃいますが、決してそうではありません。
判断に当たっては、それぞれの感じ方を重視しつつも、平均的な女性労働者(男性労働者)の感じ方を基準にすると法律で明記されています。
例えば、あなたが「髪、切った?」と上司に質問されたら、あなたはセクハラ発言だと思いますか?
恐らく、多くの人がなんとも思わず、普通の会話だと思うのではないでしょうか。
感じ方はさまざまですが、私が研修している限りでは、「髪を切ってきたのは事実だから、髪を切ったことを言われても、セクハラとは感じない」と考える方が大半です。
ですから、髪を切ってきた部下に対して、上司が「お、髪切ったね」と声をかけることはセクハラではないのです。
しかし、以下のような会話が続くと、セクハラと言われても仕方ありません。
「髪、切ったんだ。何かあったの?心境の変化?彼氏と別れたの?」
「バッサリ切ったね。前の方が女性らしくて、良かったけどね。短すぎない?」
こういうことを言われても、全く嬉しくないし、気持ちが悪いだけですから気を付けて下さいね。
ここで注意すべきは、髪を切ることは本人の自由であって、理由に関して他人に詮索されることではない、という点です。
では、管理職の方々が迷わないように、職場で行われる会話を具体的に挙げ、その会話がセクハラに該当するか、セクハラに該当しないかについて具体的に説明いたします。
具体例(1)女性部下に対して、「そのスカート短いよ」と男性上司が声をかける。
もしも、そのスカートの長さが、会社の服装規定に照らし合わせて、あきからに短く、業務に支障があるようであれば言うべきです。
服装規定に違反していることを注意するのは、セクハラに該当はしません。
しかし、服装規定と関係なく、以下のようなことを言ったら、セクハラと言われても仕方ありません。
「スカート短くて可愛いね、足きれいだね」
「下着見えそうだね」
明らかに度を超した発言です。
もしも、心の中で思ったとしても、ほめ言葉でも何でもないので、言葉に出すのは絶対にやめましょう。
具体例(2)女性部下から、「彼氏と最近会えなくて・・・」と男性上司に相談があったので聞いてあげた。
女性部下から相談で、女性部下が話すことを聞いてあげるだけであれば、問題はありません。
しかし、聞くだけでなく、以下のような会話に発展したら、セクハラと言われても仕方ありません。
「よし、じっくり聞いてあげるから、二人っきりで飲みに行こう」と飲みに誘う。
「どんな感じ?連絡はとれるの?」と根掘り葉掘り聞く。
相手から言ってきたのにと思うかもしれませんが、二人っきりで飲みに行った場合に、管理職が無理やり誘ったと言われてしまう可能性があります。
また、相手の話をじっくりと聞くためとはいえ、言いたくないこともありますので、本人が話したいことだけに耳を傾けることだけをお勧めします。
具体例(3)女性部下に対して、「さすが、女性は気が利くね!」と男性上司が言った。
素直に喜ぶ人もいると思いますが、「女性だから」と言われることに、「バカにされている」「女性蔑視」と思う人も多いでしょう。
ですので、この発言は、職場では不適切と言えます。
「女性がいると華やかになるね」
「女性がいると、職場がきれいになるね」
というのも、「女性はこうだ」という性役割を押し付けた発言ですので、職場にはふさわしくありません。
こういう場合には、「〇〇さんは、気が利くね!」とその方を名指しで褒めると、相手は気持ちよく受け止めることができます。
具体例(4)男性部下に対して、「付き合っている人はいるの?」と女性上司が独身の部下を心配して聞いた。
この質問は、セクハラと言われても仕方のないことです。
たとえ、女性から男性であっても、恋人がいるかどうか、いつ結婚するかなどの仕事に関係のないことです。
「何人と付き合ったことがあるの?」
「性的体験はいつ?」などの会話はになると、完全にセクハラです。
具体例(5)男性部下に対して、「男性だったら、これくらい食べれるでしょ」と女性上司が料理を沢山盛る。
これは、性役割の押し付けをすることになる発言なので、セクハラと言われても仕方がありません。
食事の量は人ぞれぞれです。男性だから、たくさん食べるはず、若いからもっと食べなさいと言われても、
人には人のキャパシティがあります。
「男なんだから、これくらい食べないとだらしがない」
「女でもこれくらいペロっと食べるのに、ダメね」
こういう言い方になると、セクハラでありパワハラと言われても仕方がありません。
食事を沢山食べることは仕事に関係が無いからです。
食事と同様に、アルコールを「男性だから」「若いから」と無理やり飲ませることもハラスメントです。
職場の会話で気を付けること
改めて、ここで職場での会話で気を付けるポイントについて、説明したいと思います。
ポイントは、以下の5つです。
(1)性的なことを連想させる会話をしない。
(2)仕事上、個人的なことを質問するときは理由を伝える。
(3)結婚や妊娠などについて、個人の主観を押し付けない。
(4)女性から男性、男性同士、女性同士でも、性的発言を言えばセクハラである。
(5)女性らしく、男性らしくといった性別の役割を押し付ける発言をしない。
ということです。
改めて、ここでご説明しますが、上のポイントと照らし合わせても、「髪、切った?」と声をかけるのはセクハラではないということです。
ですから、安心して、「髪、切った?」と声をかけてみてください。
ただし、余計な詮索は(どんなに色々と質問したくなっても)しないように。
さて、こういう説明をハラスメント対策研修で伝えると、
「じゃあ、何を話せばいいんだ?」と質問されることがありますので、私がお勧めしているテーマを最後に書きたいと思います。
・天気の話
・ニュースのトピック
・趣味(ただし、ご自身から話してみてください。そして、相手が言いたくなさそうだったら、それ以上詮索しないことです)
天気と言えば、今年(2020年)は暖冬でしたので、桜の開花も早いようです。
コロナの影響で、お花見は自粛ムードですが、宴会ではなくても見物に行くのはいい季節だと思います。
こういう季節の風物詩の会話は、誰も傷つけませんし、イヤな気持ちになりません。
決して、「花見は、彼氏といくの?」なんて、聞かないように、お気を付け下さいね。
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